SGH【2016インタビューシリーズ1】井藤校長先生・田中教頭先生

『インタビューシリーズ』はSGHガイドブックチーム(詳細はこちら)が
2016年12月にインタビューした内容を記事にしたものです。
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「関西学院千里国際(SIS)のSGHって何だろう?」
この問いに答えるために、結成したSGHガイドブックチーム。
第一回目は校長の井藤先生、HS教頭の田中先生からお話を聞くことにしました。

SGH校に指定されて起きた変化!?
ふみか:SGH校は全国で123校ありますが、その中でのSISの特徴というのは何ですか。

きほ:他にもSGH校はたくさんありますけど、ここは全然他のとこと違うよ、という大きな特徴を教えてください。

田中教頭先生(以下田中先生)うちが一番こだわったのは全員が参加する!これは大事。基本的にはやりたい人がやるという感じでやる学校が多いが、特別な活動ではなくてこれは全員が必ず学ぶべき大切な教育の根幹と考えている。

井藤校長先生(以下井藤先生)この学校は元々探究型の学びを創立時からしっかりやってきました。色んな授業でディスカッションしたり文章を書いたり、発表をしてきました。比較文化の授業では全員が作る論文になりましたね。SGH校に指定されてから教科を超えて全員が学校の論文としてするようになりましたね。
一つの論文を書くにも色んな教科の先生と話したり、教科を超えて先生と繋がってやっていくっていう形に変えたことはSGHとしての学校の中の変化!

きほ:なるほど。

田中先生別の見方からすると、帰国生の学校でインターンシップがくっついている環境の中で探究型の勉強の仕方は自然と、この学校の中には根付いていた。つまり、SGH的な教育という、自分で答えを見つけていこうとして、自分から学んでいこうと意気込み、自分の考えをはっきり表現し、意見を聞いて自分のものにするとか、っていうのが学校の中に根付いていた。
だからこそ今までやってきたことを整えてSGH校指定を機にもっとパワーアップしましょう!良い機会だからもっと前に行きましょう!って進んでいるのがうちらのSGHプログラム。



SISで行われる教育のベースって?
ふみか:では、アクティブラーニングを活性化させる中で意識していることはありますか。

井藤先生ひとつには、IBの学びのスタイルを参考にしているところですね。
10年生のSGHの授業の中に、TOKっていうIBのスタイルはそこにさりげなく入ってますね。
それから論文書くことにはIBの人がやっているExtented Essayって言ってる。

きほそうだったんですね。SGHの授業に取り組んでいる最中には気づきませんでした!知らぬうちにIBの学びにも触れていたわけですね。 

井藤先生フィールドスタディーに行く考え方もIBのCASの発想を参考にさせていただいています!前面には出していないかもしれないけど、OISと一緒にやってきた私達にできる強みとしてそのような要素を取り入れている。 

世の中で大活躍できるスキル、レジリエンスとは!?
ふみか:どんな思いがあって先生達はSGHプログラムをもっと充実させていこうと思っていますか?

井藤先生レジリエンスという言葉が一つ当てはまりますね。レジリエンスに富んだグローバルリーダーを育てます。 

ふみか:レジリエンスっていうのは、我慢という意味ですか?すいません、知らなくて!

田中先生レジリエンスというのは、折れない気持ちというか、気持ちの粘り強さを強くすること。SISでこれまでも自分で時間割作って自分で関心のあるところに自主的に関わり、どんどん動いたきた。でもこの世の中に出て苦しい経験もするかもしれない。だから高校の間に色んな人にもまれながらしっかり世の中を生きていく強さがまだ私達が伸ばせるところやと思ったんです!
一生懸命いろんなことをやるんだけど、もっと一生続けていくためにはベースとなる気持ちの強さをもっとしっかり身につけてほしいなと思います。やっていることはフィールドスタディーに行って文章書いて論文書いてってことなんだけど、それらを通じて気持ちの強さをつけるといったことを意識したい。

井藤先生SGHのプログラムとして具体的には四段階あって、まず自分で課題設定して一人でやっていくよね。一人一つのテーマを持ってね。
  1. 自分をよく知る、次に他の人とコミュニケーション取って自分の意見をちゃんと出すレジリエンス
  2. 相手の意見も吸収するレジリエンス
  3. 課題を突き詰めるレジリエンス
  4. そしてそれが何か世の中の役に立つ解決方法にしていくんだという気持ちを高めるレジリエンス
実際にやることはフィールドスタディーに行くとかペーパーを書くということなんだけれどもその中でみんなはこの4つの力を身につけてほしい!

ふみか:その問題解決能力を養う、問題を解決するにおいても、やっぱり前提にはレジリエンスがすごい必要やなと思うから、すごく良いことですよね!

田中先生そのレジリエンスを理解するためにはその解決能力って言ってることの逆って何って考えたらいいんですよ。なんやと思います?
…それはね、答えを教えてもらうこと。答えを教えてもらったら解決しようとせえへんやん。教科書に載ってる知識を覚えると、答えはいっぱい頭に入るかもしれへん。でも新しい問題に対して答えは絶対教科書には載ってないですよ。 

ふみか:なるほど!SISを卒業していく、私たちですね。SISで学べることをたくさん吸収して世の中で活躍できる人に!

田中先生:その人材をここで育ててるやん。


グループ活動あるあるのお悩み解決!「人それぞれ。」で全部片づけていいの?
こうきグループで動いている中で、最終的には自分の主張は通らず相手の主張が通って、思い通りにならなかったとしても進めていかないといけないことになるときがあります。そのときどういった姿勢で臨めばいいかお聞きしたいです。 

井藤先生先ほど話した4つレジリエンスのうちの2つ目ですよね。先生の言うことをノートに書いて、それをテストでどれだけ表現できたらいいかで良い成績付くかが決まるっている勉強スタイルと今学んでいるスタイルは全然違うよね。
自分の意見も言う、人の意見を聞く。そんな中でどのように折り合いをつけていくかっていうとこまで、このプログラムには入ってますよね。どうしたらいいかの答えにたどりつかなくてもいい。問題はそこじゃなくて、そういう経験やプロセスを今どれだけ色んな形で違う形で経験するかに意味がある!


田中先生:今も毎日の生活そのまんまやん。上手いこと行かないじゃないですか。でしょ?

こうき:はい。そうですね…なかなか難しいです…

田中先生思い通りに行かないよね。例えばOISと一緒にやってることで文化の違い感じるでしょ。SISとOISの分け方では足らないくらいの、色んな色んな考え方の人と一緒に生活をしているから、中々思い通りにはいかない。それが僕らの日常。日常から、自分とは考え方が違う人とやっていく方法を学んでた。
それはレジリエンスを鍛える一つになりうる。いやになるけど、また次の日になったらがんばってもっかいなんとかしようとしてみる。うちのこたちは多分この学校にいる間ずっとやってるんだと思いますよ。  

きほ:確かに。様々なバックグラウンドを持った人たちと学びを共にしているからこそ鍛えられる部分は大きいですね。

田中先生ちなみにレジリエンスって最近ははやりでね。地球問題の国際会議でも出てくる。できたときに学校が目指そうとしたのは大学に入るための学校じゃなくて、大学あるいはさらに社会に出てから役に立つ、そこに繋がるような教育をしましょう。そういう人を育てましょうって。それってじゃあ何なん?
…問題解決能力ですよ。色んな仕事してるときに課題に対してじゃあこうしようって提案できる人。世界中は戦争とか紛争とかテロとか色んな課題がありますよね。そういうことにたいして君たちは世の中に出てもっと力つけて、そういう課題を解決していく、レジリエンスな力を持った人たちが出てくるのが一番いいんでしょうね。良い学校やと思いますよ、ここ。



5リスペクトが秘めた世界を平和にする鍵とは
田中先生:5リスペクトはね、すごいなと思った。

ふみか:他の学校にある校則とはかなり違いますよね。5つのことをリスペクトするように、とスケートボードとガムが禁止。

田中先生あれなんでできたか知ってる?開校するときに決まりって作れないことに初めて気づいた。あぁ、こういう学校ではあの日本風の校則っていうのは作れないんだって。その気付きから始まってん。
5リスペクトでなければ世界がっていうかここの学校の中で一つになれない。実はそういう精神が世界をつなぐんだ。これが良いとか悪いとかの価値判断ではなくて、人を大切にしますっていうその価値判断を共有できたら、それが本当にできたら世界は平和になるわけでしょ。そう考えると5リスペクトというルールはすごいよね。

こうき:確かに。違う価値観を持った人との共存方法をここで試して練習しておいたら、世界を平和に一歩でも近づけられるかもしれないですもんね。


先生たちもレジリエンスを持って探究!生徒もいつのまにか…!?
田中先生何年経ってもね、OISの先生と職員会議してるでしょ。こんなんしようやっていったらそんなん無理って言われて。そこ引っかかるん!?っていまだに発見あるけどね。みんなにとって一番いい形を探すのってそう簡単ではない、でもそれを絶えず探しながら今でもやってるよ。それ凄いと思うわ。でみなさんもやってきたかなって。 

ふみか:気付かない間に!

田中先生やってきたし、これからもやってほしいですよね。それが学べる場所だよね。答えが僕にあるわけじゃない。君ら自身がそうやって模索するなかで見つけるっていう体験してくれて。
学校はまたそれで少し一歩前に進める!そうやって繋がっていくんや、そうやってお互い理解していくんだってことをここでは学べるんですよ!


SIS生にメッセージ!
こうき:では最後にSIS生にメッセージをお願いします!

田中先生:メッセージ、難しい…

ふみかメッセージや、ずっと進化し続けてるけどどう進化させて今後進化を繋げていきたいとか、その進化するにおいて私達生徒にどういうことを求めてるとか。 

田中先生じゃあ僕から先に!去年からSGHのプログラム始まったじゃないですか。これもSGH自体も手探りで答えが無い中で僕ら自身が課題問題解決型でやってきて、一個一個やってきたわけです。 

きほ:去年からSGHの授業でどう行うか先生方も試行錯誤で行っていますよね。

田中先生去年一年やってみて思ったんはSGHの授業の成果が期待以上、本当に大きかったんです。こんなにみんな生徒変わるんやって。本当に課題を見つけてそれを解決していくっていうことをやってもらうようになったら、それがこのやってた人たちがめっちゃおもしろいって!もっと知りたくなったって!
そういう言葉をどんどん出すようになっていったんを見て逆に教師である我々が、仕掛けてる方の我々が、凄いなと思ってちょっと感動してたんです!何をきっかけに参加した生徒が動き始めたのかを知りたいと思ったし、それを活かしてこれからのプログラムにしようと思った。それが今次の世代その次の世代に繋がっていこうとしてんねん。

きほ私はそれに参加しましたが本当に自分は大きく変われたと思います。興味を持つようになった分野も増え、なお自主的に取り組めるようになりました。その変化を他の生徒たちにも伝えていくことは本当に大切なことだと思います。 

田中先生でも実際めんどくさいよね。論文書けとか、あれせえこれせえとかいっぱい課題が出てくるから。でも!これはやったらやっただけのことはある!結構そのやった人たちだけは分かってると思うねんけど、やっぱりやってみて損は無いよ。
やっぱりこういう学び方やっとくのは本当に大事やったんやなっていうのを今すごく感じてる。だから生徒のみなさんへのメッセージっていうのは、まあ、信じてやってみって。だまされた思ってやってみ!そしたら本気でやればそれだけのものは返ってくると思うよ。それは皆さんのこれからに絶対役に立つと思う。

井藤先生それに加えて別の角度から言うとSGHのみんなの生徒のテーマ設定のタイトルとしてより良い、より平和な世界の構築っていうのがある。
より平和な世界を創ることっていうのも意識してほしい。世の中もっと私たちの住みやすい場所に自分のためだけじゃなくて他のどこかの誰かのために、ということも意識してほしい。
色んな違う意見の人違う国籍持った人、違う文化の人に対して、世の中が優しくなくなっていってるんじゃないかっていうのが、すごく今心配ですよね。

ふみか:はい。違う国籍を持っている人に対して偏った先入観を持ってしまうことで違う国籍の人がすごしにくくなることもありますからね…


井藤先生私たちは自分と違う人、自分と違う文化を持った人、自分と違う環境で育った人、自分と違う言語を話す人、色んな人に対して地球市民として向き合いたいですね。
SISを卒業していく人は、地球市民という士気で世の中生きていける人。
このプログラムを通じてこの心意気を高めてもらいたいです。それが周りまわってあなたたちの豊かで幸せな人生につながると信じているからです。 

きほ・ふみか・こうき:有難うございました。